分け目が広がってきた、トップがぺたんとする——そうおっしゃって来られる方の髪を分けて見ていくと、本数そのものは以前とそれほど変わっていないことがよくあります。減ったように見えているだけで、実際に起きているのは別のことです。
ボリュームが出ない理由は、大きく3つに分けられます。①髪1本が細くなった ②根元の立ち上がりが寝ている ③髪同士が絡んで膨らまない。この3つは、原因も、手をつける場所も、変わるまでにかかる時間も違います。
そして自分がどれなのかは、分け目を反対側にして5分置くだけで、かなりの部分が見分けられます。ここを確かめないまま「ボリュームアップ」と書かれたものを足していっても動かない、というのがいちばん多い行き止まりです。見分け方と、手をつける順番を書いていきます。
髪のボリュームが出ないのは、髪が減ったからですか?
減っている方もいらっしゃいます。ただ、40代・50代の方からいただく「ぺたんとする」というご相談の多くは、本数ではなく1本の太さと、根元の立ち上がりで説明がつきます。鏡で見える髪の「かさ」は、本数だけで決まるのではなく、1本の太さと、根元がどれだけ起きているかの掛け算で決まるからです。
根元が寝ていれば、髪は頭のかたちに沿って張りつきます。分け目が広がって見えるのは、この「張りつき」が起きているときがほとんどです。
本数が減ったのか、1本が細くなったのか
見分ける手がかりは、ゴムで束ねたときの太さと、1本をつまんだときの手ざわりの、どちらが変わったかです。束の太さはそれほど変わっていないのに手ざわりが頼りなくなった、という組み合わせなら、本数ではなく1本の太さの話です。束そのものが明らかに細くなっているなら、本数も関係しています。実際には両方が少しずつ重なっていることが多いのですが、「どちらが主か」が分かると、先に手をつける場所が決まります。
なぜ、年齢とともに髪は細くなるのですか?
髪は、毛穴の中で髪をつくっているところから、伸びる期間と休む期間をくり返しながら生えています。年齢を重ねると、この伸びる期間が少しずつ短くなり、太くなりきる前に抜けて次の毛に入れ替わることが増えていきます。結果として、細くて短い毛の割合が増えます。
ただ、年齢だけが理由だと言い切れるものでもありません。睡眠や食事、地肌の乾燥や皮脂の詰まり、強く引っぱる結び方といった要因が重なっていることも多く、同じ年齢でも差が大きく出ます。「年だから」で片づけてしまうと、動かせる部分まで手つかずになります。年齢による髪の変わり方全体については「40代・50代で髪が変わるのはなぜ? 4つの変化と、手をつける順番|施術3万人以上の美容師が解説」にまとめています。
なぜ、分け目と頭のてっぺんから気になるのですか?
分け目とつむじまわりは、いちばん上から見える場所であると同時に、紫外線が直接あたり、根元が何年も同じ向きに固定され続ける場所でもあります。髪全体に同じ変化が起きていても、ここだけが先に目につきます。白髪が分け目や生え際から増えたように見えるのも、同じ理由です(「白髪は抜いていい? 増えるのかと、抜かないほうがいい3つの理由|施術3万人以上の美容師が解説」)。
自分がどれなのかは、分け目を変えると分かります
この記事でいちばんお伝えしたいのは、ここです。「どうすればボリュームが出るか」を考える前に、自分のぺたんこが3つのうちどれなのかを見てください。家の鏡の前で、数分でできます。
① 分け目を反対側にして、5分置いてみる
いつもの分け目を手で反対側に倒し、そのまま5分ほど置きます。根元が起き上がって頭のかたちが変わるなら、立ち上がりの問題です。髪そのものには十分に力があって、ただ同じ向きに寝るクセがついているだけ。この場合は、乾かし方と分け目の扱いで、今日から変わります。
反対側に分けてもすぐにぺたっと戻ってしまう場合は、立ち上がり以外の要因が重なっています。
② 乾かしたては立つのに、昼には潰れていないか
朝はふんわりしているのに、昼過ぎには分け目が割れている——これは乾かし方の話です。根元が乾ききっていないと、残った水分の重みと、冷めるときのかたちで寝てしまいます。逆に、乾かしたてから立たないのであれば、立ち上がり以前に1本の力が落ちているか、髪同士が絡んで膨らめていません。
③ 顔まわりの毛と、襟足の毛をつまみ比べる
顔まわり・分け目まわりの毛を数本つまみ、襟足の毛と手ざわりを比べます。上のほうだけ明らかに細く頼りないなら、太さの話です。ここは年単位で向き合う部分で、今日明日では動きません。
どこをつまんでも同じようにパサついて絡むなら、うねりで膨らめていない可能性があります。うねった毛は互いに引っかかって、束の中に空気を抱えられません。原因と対処は「髪のうねりはなぜ出てくる?原因と、家でできる対策・お店でできる対策|施術3万人以上の美容師が解説」に書いています。
| 確かめたこと | 考えられる主な理由 | 最初に手をつけるところ |
|---|---|---|
| 反対分けで根元が起き上がる | 立ち上がりが寝ているだけ | 乾かし方・分け目の位置 |
| 朝は立つが、昼には潰れる | 根元の乾かし残し・水分の重み | 乾かし方・アウトバスの量と位置 |
| 上のほうの毛だけ細い | 1本が細くなってきている | 地肌の洗い方・暮らし方(年単位) |
| 全体に絡んで膨らまない | うねり・乾燥 | うねりへの対処・保湿 |
※ 感じ方や変化の出かたには個人差があります。実際には複数が重なっていることのほうが多いので、「いちばん強く当てはまるもの」から手をつけてください。
手をつける順番は、乾かし方からです
順番を間違えると、いちばん効く手が後回しになります。おすすめの順番はこうです。
- 乾かし方を変える … 根元から、分け目を作らずに乾かす
- 分け目を固定しない … 位置を少しずらす、日によって変える
- 地肌の洗い方とシャンプーを見直す … 髪ではなく地肌を洗えているか
- カットやパーマで土台を変える … 長さ・重さ・根元のかたち
① 乾かし方:根元を起こしてから、冷ます
タオルで水気を取ったら、髪を前に倒すか、いつもと逆の方向に倒して、根元に風をあてます。このとき指で地肌をこするように動かすと、根元が同じ向きに寝ません。根元が8〜9割乾いてから、最後に手ぐしで整えて冷風をあてます。髪のかたちは、乾くときではなく冷めるときに決まります。この数十秒が、昼まで持つかどうかを分けます。
洗い流さないトリートメントやオイルは、根元ではなく中間から毛先に。根元につけると、その重みで立ち上がりが落ちます。
② 分け目:同じ場所で分け続けない
何年も同じ位置で分けていると、根元がその向きで固まり、地肌の線がくっきり出ます。2〜3cmずらすだけでも、見え方はかなり変わります。ジグザグに分ける、分け目を作らずに全体を後ろへ流す、という手もあります。
ずらした直後は落ち着かないので、乾かすときからずらした位置で始めるのがコツです。
③ 地肌:髪ではなく地肌を洗えているか
シャンプーを泡立てて毛の表面をなでているだけだと、地肌の皮脂や整髪料は残ります。残ったまま重なっていくと、根元がべたついて寝やすくなります。指の腹を地肌に着けて動かす——これだけで、乾かしたときの立ち上がりが変わる方は多いです。
地肌に赤み・かゆみ・しみる感じがあるときは、洗い方よりも先にそちらを見てください。見分け方は「頭皮トラブルのサインと、シャンプーの選び方|赤み・かゆみ・しみるときに見ている4つのこと」に、地肌に合わせた薬用シャンプーの選び分けは「キュアフォース シャンプー|サロン専売・医薬部外品の4タイプと選び方」にまとめています。
地肌へ触れる習慣をつけるのもおすすめです。力を入れてこする必要はなく、頭皮を動かすように指を置くだけで構いません。ブラシを使うなら、クッション性のあるものが扱いやすいです(「パドルブラシとは?頭皮ケアに使える理由と使い方・選び方を美容師が解説」)。
④ カットとパーマ:土台のかたちを変える
ここは美容室側の手になります。重さを取るだけでは、かえってぺたんとすることがあります。トップに短い層をつくって根元を支える、根元だけにゆるいパーマをかけて立ち上がりの方向をつくる——ボリュームを出す目的で実際に使うのは、このあたりです。ただし、どちらも髪と地肌の状態によって向き不向きがあります。細くなってきた髪に強い薬剤をかけると、立ち上がりより先に手ざわりが落ちます。
ボリュームアップをうたう道具やケアは、どこまで効きますか?
効く範囲がはっきり分かれます。ブラシやアイロンのような道具は「立ち上がり」に効きます。熱と風でかたちをつけるので、その日のうちに結果が出ます。外出先でトップを起こし直したい、という使い方なら小型のアイロンが便利です(「くせ毛さんの外出中の強い味方!ボリュームアップ特化」)。
一方で、1本の太さは、道具では変わりません。こちらは地肌の環境と暮らし方の積み重ねで、年単位の話になります。この2つを混ぜて考えると、「ボリュームアップと書いてあるのに効かない」となってしまいます。
ボリュームアップをうたうシャンプーも、多くは髪を軽く仕上げて根元を起きやすくする設計です。しっとりさせる処方のものは、うるおう代わりに根元が落ち着きます。良し悪しではなく、設計の向きが違うだけです。どちらが自分に要るかは、先ほど確かめた3つのどれに当てはまるかで決まります。
5年先を決めるのは、今日のふんわりではありません
立ち上がりは今日変えられます。1本の太さは、今日は変えられません。この時間差を知っているかどうかで、5年後の見え方が変わってきます。
毎朝アイロンで起こしてしのいでいる方と、乾かし方を直したうえで地肌を整えてきた方とで、1年ではほとんど差が出ません。ところが3年、5年と続くと、片方は「起こせばなんとかなる髪」のまま、もう片方は「起こさなくても落ち着く髪」へと離れていきます。地肌のケアは今日の鏡では何も変わらないので後回しにされますが、あとから取り返しがききにくいのもここです。今日のふんわりは道具で、5年先は地肌で。この二本立てで考えてください。
表だけでは決まらない、3つのこと
ここまでの見分け方で、手をつける場所は2つか3つに絞れます。ただ、最後の1つを決めるには、見ないと分からない条件が効きます。
① 分け目の位置と、顔まわりの生えぐせ
分け目をずらせるかどうかは、生えぐせ次第です。つむじの向きや生え際の流れによっては、ずらすとかえって割れます。何cmどちらにずらすかは、濡れた状態の根元を見ないと決められません。
② これまでのカラー・パーマの履歴
根元にパーマをかけてよいかどうかは、いまの髪が薬剤の負担に耐えられるかで決まります。白髪染めを重ねてきた髪は、見た目より負担が蓄積していることがあります。染める間隔や範囲の考え方は「白髪染めの頻度はどれくらい? 伸びるスピードと、根元だけ染める考え方|施術3万人以上の美容師が解説」に書きました。
③ 地肌の状態と、気になり方の強さ
赤み・かゆみ・かぶれやすさがある場合は、洗い方やシャンプーを変える前に確認することがあります。かぶれやアレルギーが疑われるときは、ご自身で判断せず、必ず医師にご相談のうえで検討してください。
この3つは、ご自身で判断しないほうが早い部分です。ご相談のときは「ボリュームを出したい」ではなく、「分け目を反対にすると起きるけれど、昼には潰れる。乾かし方とカットのどちらから手をつけるか迷っている」のように伝えていただけると、その場で決められます。
よくある質問
ボリュームアップシャンプーを使えば、ふんわりしますか?
立ち上がりが寝ているタイプの方は、違いを感じやすいです。髪を軽く仕上げて根元を起きやすくする設計のものが多いためです。ただ、1本が細くなっているタイプの方が使っても、太さそのものは変わりません。先に、分け目を反対にする確かめ方でご自分のタイプを見てから選んでください。
分け目は、こまめに変えたほうがいいですか?
同じ位置で分け続けるより、ときどきずらすほうが根元は寝にくくなります。毎日変える必要はなく、2〜3cmずらした位置で乾かす日をつくる程度で十分です。ずらした直後は落ち着かないので、乾かす段階からその位置で始めてください。
パーマをかければ、ボリュームは出ますか?
根元に方向をつける目的のゆるいパーマは、立ち上がりに効きます。ただし、髪と地肌の状態によっては向きません。細くなってきた髪に強い薬剤をかけると、立ち上がりより先に手ざわりが落ちることがあります。かけられるかどうかは、髪を見てからの判断になります。
短く切ったほうが、ボリュームは出ますか?
長さの重みが減るぶん、根元は起きやすくなります。ただ、量を減らしすぎると支えがなくなって、かえってぺたんとすることがあります。短くするかどうかよりも、どこに短い層を入れるかのほうが効きます。
頭皮マッサージは、ボリュームに効きますか?
地肌をやわらかく保つという意味では、続ける価値があります。ただ、今日明日でふんわりする類のものではありません。今日の立ち上がりは乾かし方で、地肌は5年先のために、と分けて考えてください。力を入れてこすると負担になるので、頭皮を動かす程度にとどめます。
最後に
分け目やトップのぺたんこは、「減ってしまった」と受け取られやすいぶん、実際より重く感じられます。でも確かめてみると立ち上がりだけの話だった、ということが本当によくあります。まずは分け目を反対にして、5分置いてみてください。そのうえで迷われたときは、髪を見れば数分で切り分けられます。
ご相談はLINEからお気軽にどうぞ。施術メニューと料金は料金メニュー、場所はアクセスをご覧ください。
地肌から整えていきたい方は、ご自宅のシャンプーを見直すのがいちばん続きます。
