グレイヘアへの移行には、染めるのをやめてから1年半から2年ほどかかります。髪が伸びるのは1か月に約1cm。肩につく長さの方なら、最後に染めた色が残った毛先を切り終えるまでに、だいたいそのくらいの時間がかかります。
ただ、移行がうまくいくかどうかを決めるのは、かかる時間の長さではありません。白髪の量と、生えている散り方です。同じ1年半でも、境目がほとんど目立たないまま終わる方と、はっきりしたツートーンが1年以上続く方に分かれます。
この差は、始める前にご自身で見当をつけられます。分け目とこめかみの2か所を見れば、どちらのタイプかはだいたい分かります。そして、途中でやっぱり染めたいと思ったときは戻せます。戻し方の順番まで含めて書いていきます。
グレイヘアに移行するには、どのくらいかかりますか?
目安は1年半から2年です。これは「染めた色が毛先からなくなるまで」の時間なので、いまの髪の長さでほぼ決まります。切りながら進めるなら、もっと早く終わります。
| いまの長さ | 染めた毛先がなくなるまでの目安 | 境目が気になりやすい時期 |
|---|---|---|
| ショート(あご上) | 約8か月〜1年 | はじめの3〜6か月 |
| ボブ〜肩 | 約1年〜1年半 | 3か月〜1年 |
| ミディアム〜ロング | 約1年半〜2年半 | 3か月〜1年半 |
見ていただきたいのは右の列です。移行そのものより、境目が気になる時期をどう過ごすかで、続けられるかどうかが決まります。途中でやめてしまう方のほとんどは、ここで戻っています。
「染めるのをやめた日」が、移行の始まりではありません
染めるのをやめても、最後に染めた色は毛先に残り続けます。カラー剤で入れた色は髪の中にとどまっているので、洗って落ちるものではありません。ですから移行の進み具合は「やめてから何か月たったか」ではなく、染まっている毛先があと何cm残っているかで考えるほうが正確です。
短く切るほど、早く終わります
肩までの長さの方が思い切ってショートにすれば、計算上は半年から1年で終わります。毎回少しずつ切るより、はじめに長さを決めてしまうほうが、途中のツートーンの幅も狭く済みます。短くしたくない方は、次に書くぼかし方で時間をかけて進めるほうがうまくいきます。
移行がうまくいくかは、白髪の量と散り方で決まります
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。相談でうかがうのは「何年かかりますか」が多いのですが、実際に結果を分けているのは期間ではありません。白髪がどれくらいあって、頭のどこに散っているかです。
白髪が多く、全体に散っている方は、境目が出にくい
白髪が7割から8割くらいあって、頭全体にまんべんなく散っている方は、移行がいちばん楽なタイプです。伸びてきた部分と毛先の差が、色の境ではなく濃淡のグラデーションとして見えるので、ツートーンになりにくいからです。
白髪が少なく、固まって生えている方は、境目が強く出る
反対に、白髪が3割から4割くらいで、分け目や生え際だけに固まって生えている方は、境目がくっきり出ます。白い部分と黒い部分の面積がはっきり分かれるため、伸びてきた境界線がそのまま横一本の線に見えてしまいます。
この場合、何もせずに伸ばすと1年以上その状態が続きます。このタイプの方こそ、ぼかす手を先に打っておく価値があります。
分け目とこめかみを見れば、どちらのタイプか分かります
明るい場所で分け目を開いて、生えぎわ1cmのところを見てください。白い髪が点々と散っているのか、ひとかたまりになっているのか。次にこめかみを同じように見ます。この2か所が「散っている」なら境目は出にくく、「かたまっている」なら出やすいと考えて、ほぼ合います。白髪の量そのものより、散り方のほうが効きます。
途中の見え方は、どうやって乗り切りますか?
手は5つあります。上から順に、効果が大きいものです。
- ハイライトを入れて、境目をぼかす。白髪と同じ明るさの細い筋を全体に散らし、白髪を「線」から「点」に変えます
- いま染めている色を、徐々に明るくしていく。暗く染めるのをやめるだけで、半年後の境目の出方が変わります
- カラートリートメントに切り替える。色を薄く入れながら、少しずつ白髪を出していけます
- 分け目を変える。いつもと反対側に分けるだけで、伸びた部分が立ち上がって目立ちにくくなります
- ヘアマスカラで、その日だけ隠す。人と会う予定の日だけ使う方法です
3のやり方は「カラートリートメントとカラーリンスの違いは?白髪への効果と使い方を美容師が解説」に、5のやり方は「白髪隠しヘアマスカラ・カラースプレーの選び方と落とし方を美容師が解説」にまとめています。
ハイライトは、境目をぼかすのにいちばん効きます
移行期にハイライトを使うのは、髪を明るくしたいからではありません。白髪が集まっている部分と、まだ黒い部分の境を、わざと分かりにくくするためです。細い筋を全体に散らしておくと、根元が伸びてきても「白い線が1本現れた」のではなく「もともと明るい筋があるところに白髪が混ざった」という見え方になります。
ただし、ハイライトは髪を明るくする薬剤を使うので、髪への負担はかかります。何本入れるか、どのくらいの明るさにするかは、いまの髪の状態を見て決めることになります。
暗く染めているほど、境目は強く出ます
移行を考えはじめたら、その日から少しずつ明るめに染めていくほうが、あとが楽になります。真っ黒に近い色に染めていた方がいきなりやめると、白と黒のいちばん強いコントラストが出てしまうからです。いますぐやめなくても構いません。染める回数や範囲の考え方は「白髪染めの頻度はどれくらい? 伸びるスピードと、根元だけ染める考え方|施術3万人以上の美容師が解説」に書いています。
途中でやめたくなったら、染め直せますか?
戻せます。グレイヘアへの移行は、始めたら引き返せないものではありません。
ただし、半年から1年ぶりに染めるときは、ふつうに染めるのとは条件が違います。伸びた白髪の部分と、まだ色が残っている毛先では、染まり方が変わるからです。同じ薬剤を一度に全体へ塗ると、根元だけ明るく浮いたり、毛先だけ暗く沈んだりしてムラになります。
戻すときは、伸びた部分と毛先で塗り分けるのが基本です。白髪染めとふつうのヘアカラーの違いや塗り分けの考え方は、「【施術3万人以上の美容師が解説】白髪染めとおしゃれ染めの違い|同時に使える?明るくできる?」にまとめています。
染めるのをやめると、髪は元気になりますか?
負担は減ります。ただ、「染めるのをやめれば髪が若返る」とまでは言えません。ここを期待して移行すると、半年後にがっかりすることが多いので、先に書いておきます。
負担は減りますが、髪質そのものが変わるわけではありません
カラー剤を使わなくなれば、そのぶんの負担はかからなくなります。毛先の手ざわりが変わってきたと感じる方もいます。一方で、年齢とともに変わった髪の太さやうねりは、染めるのをやめても元には戻りません。それどころか、これまでカラーの色みで隠れていたパサつきやうねりが、前に出て見えるようになります。白髪は光を反射しやすく、黒い髪より質感がそのまま出るためです。40代・50代で髪に起きている変化は「40代・50代で髪が変わるのはなぜ? 4つの変化と、手をつける順番|施術3万人以上の美容師が解説」にまとめました。
5年先のグレイヘアの印象を決めるのは、色ではなくツヤです
グレイヘアがきれいに見える方と、疲れて見える方の差は、白髪の量ではありません。ツヤがあるかどうかです。同じ白さでも、表面がなめらかで光が一方向に返る髪は上品に見え、表面が乱れて光が散る髪はくすんで見えます。
これは5年先、10年先ほど効いてきます。白髪の割合は年々上がっていくので、ツヤの差がそのまま見た目の差になっていくからです。だから移行を決める前に、乾かし方とホームケアを整えておくほうが、結果的にうまくいきます。色を抜く準備ではなく、ツヤを保つ準備が先です。
表だけでは決まらない、3つのこと
ここまでで、ご自身がどのタイプかと、どの手を使うかは絞れたと思います。ただ、実際に始めるかどうかは、髪を見ないと決められないことが3つ残ります。
1. 顔まわりの白髪が、どこに出ているか
グレイヘアが似合うかどうかは、白髪の量より出ている位置で決まります。こめかみから前に向かって出ている方は顔まわりが明るくなるので移行しやすく、後頭部にかたまっている方は前から見ると黒く、横から見ると白いというちぐはぐな見え方になります。鏡で正面から見るだけでは判断がつきません。
2. これまで何で染めてきたか
ヘナで染めてきた方、カラートリートメントを長く使ってきた方は、毛先に色が蓄積しています。この状態だとハイライトが思ったように入らないことがあり、ぼかす作戦そのものが使えない場合があります。何をどのくらいの期間使ってきたかで、取れる手が変わります。
3. 髪のハリ・コシと、今の量
ハイライトは髪を明るくする薬剤を使うので、細くなってきた髪やボリュームが気になる髪には、本数や明るさを抑える判断が要ります。ここは実際に触ってみないと分かりません。
この3つは、ご自身で判断しないほうが早いところです。一度見れば、移行に向いているか、向いていないならどこまで明るくして止めておくか、その場でお伝えできます。
ご相談いただくときは、「グレイヘアにしたい」ではなく、「移行したいけれど途中の見え方が不安。ハイライトでぼかすか、このまま伸ばすかで迷っている」と言っていただけると話が早いです。迷っている2つを出していただくのが、いちばん具体的な答えにつながります。
よくある質問
グレイヘアに移行するのに、いい年齢はありますか?
年齢で決まるものではありません。目安になるのは年齢より白髪の割合で、全体の7割を超えてくると移行は格段に楽になります。逆に3割前後で始めると、途中の期間がいちばん長く、いちばん目立ちます。急ぐ理由がなければ、白髪がもう少し増えるまで明るめのカラーでつないでおく選び方もあります。
途中でバッサリ切れば、すぐグレイヘアになりますか?
染めた毛先を全部切り落とせる長さまで短くすれば、その時点で移行は終わります。ただ、そこまで短くできる方は多くありません。現実には、半分の長さまで切って残りを3〜6か月かけて伸ばす進め方が多いです。切る量と待つ期間は引き換えなので、どちらを選ぶかを決めるところから始めます。
ハイライトを入れると、髪は傷みませんか?
髪を明るくする薬剤を使うので、負担はかかります。負担をゼロにはできません。そのうえで、入れる本数を絞る、明るくする幅を抑える、間隔をあけるといった調整で、負担を抑えながら進めることはできます。感じ方には個人差がありますので、いまの髪の状態を見たうえで本数を決めるのが現実的です。
白髪染めをやめると、白髪は増えますか?
増えません。染めるのをやめても、白髪になる進み方そのものは変わりません。染めていた色がなくなるぶん、もともとあった白髪が見えるようになるだけです。白髪が増えたように感じる原因については、「白髪は抜いていい? 増えるのかと、抜かないほうがいい3つの理由|施術3万人以上の美容師が解説」に書いています。
移行の途中は、どれくらいの間隔でお店に行けばいいですか?
染めないぶん間隔はあいても大丈夫ですが、2〜3か月に一度は見せていただくほうが結果はよくなります。毛先をどこまで切るか、ハイライトを足すかどうかは、伸び方を見ながら決めるものだからです。放っておくと「気づいたら切りどきを逃していた」ということが起こります。
最後に
グレイヘアへの移行は、やめると決めて待つだけの作業ではありません。白髪の散り方を見て、ぼかすか伸ばすかを選んでいく施術です。どちらのタイプか分からない、途中で心が折れそう、という段階でも構いません。髪を見れば、進め方と期間の見通しをお伝えできます。
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