白髪は、抜かないほうがいいです。ただ、よく言われる「抜くと増えるから」が理由ではありません。白髪は、抜いても本数が増えることはありません。
抜かないほうがいい理由は、別のところに3つあります。①同じところから、また白い髪が伸びてくる ②抜いた跡から出てきた短い毛が立ち上がって、かえって目立つ ③同じ場所でくり返すと、将来そこから髪が生えにくくなることがある。どれも「増える/増えない」とは別の話です。
とくに3つめが大事です。白髪が出やすい場所は、将来いちばん薄くなりやすい場所でもあります。薄毛を気にしていないうちに抜いてしまうと、何年か先にいちばん髪に残っていてほしい場所から、先に減らしていくことになります。
とはいえ、1本や2本抜いてしまったから取り返しがつかない、という話でもありません。大事なのは、この先どうするかです。抜く代わりの手は「切る」「隠す」「染める」の3つ。どれを選ぶかは、白髪の本数と、生えている場所でだいたい決まります。ただし最後のひとつは、髪を見ないと決まりません。その理由も最後に書きます。
白髪は抜くと増えますか?
増えません。ひとつの穴から生えてくる毛の本数はもともと決まっていて、1本抜いたからといって、その隣に新しい毛が生えてくるわけではないからです。「抜くと増える」は、昔から言われてはいるものの、根拠のある話ではありません。
では、なぜ増えたように感じるのか。理由は2つあると考えています。
ひとつは、白髪は同じ時期に、まわりもまとめて白くなっていくことが多いからです。1本見つけて抜いた数週間後に、同じあたりで2本3本と見つかる。時間の順番としては「抜いた→増えた」なので、原因と結果のように結びついて記憶に残ります。実際には、抜かなくても同じように増えています。
もうひとつは、抜いた跡から伸びてきた短い毛が、目につきやすいことです。まわりの長い髪に沿わず、分け目やつむじからぴょんと立ち上がります。本数は変わっていないのに、見える本数だけが増えます。
ただし、「抜いても何も起きない」と言い切れるものでもありません。増えはしませんが、別のことが起きます。
それでも白髪を抜かないほうがいいのは、なぜですか?
理由は3つあります。どれも「見た目がその場でどうなるか」ではなく、数週間から数年かけて効いてくる話です。だからこそ、気づいたときには戻しにくくなります。
① 同じところから、また白い髪が伸びてくるから
抜いたからといって、次に生えてくる髪の色が変わるわけではありません。同じ場所から、また白い髪が伸びてきます。髪が伸びる速さは1か月に1cm前後なので、数週間もすれば元どおりです。
つまり、抜くという手は、その場で見えなくなるだけで、何も先に進みません。同じことを毎月くり返すことになります。
② 短い毛が立ち上がって、かえって目立つから
分け目・つむじ・顔まわりは、ただでさえ人の目に入りやすい場所です。ここで抜くことをくり返すと、その一角だけ毛の長さがばらばらになります。
長さがそろっていない毛は、乾かしたときにそこだけ浮きます。白い毛は光を反射するので、短く立ち上がった1本は、寝ている1本よりずっと目立ちます。抜いた本人がいちばん気にしている場所が、いちばん不ぞろいになっていくのは、できれば避けたいところです。
③ 同じ場所でくり返すと、将来そこから髪が生えにくくなるから
3つのなかで、いちばんお伝えしたいのがこれです。
毛を抜くという行為は、毛穴の中で髪をつくっているところを引っ張って、負担をかけることでもあります。この部分は、ある種のコラーゲンによって毛穴の壁につなぎ止められています。引っ張る刺激が重なると、そのつなぎ止めが少しずつ弱くなっていきます。
つなぎ止めが弱くなると、毛穴そのものが少しずつ小さくなります。小さくなった毛穴からは、細い毛しか出てきません。さらに進むと毛穴そのものがなくなり、そこからは髪が生えてこなくなります。
同じことは、年齢とともに誰にでも少しずつ起きます。問題は、抜くことで、その進み方を自分から早めてしまうところです。
白髪が出やすい場所は、将来薄くなりやすい場所でもあります
見落とされがちなのですが、白髪が出てくる場所と、将来うすくなってくる場所は重なります。ひとつの毛穴の中で、色をつくる働きと、髪そのものをつくる働きが隣り合っているからです。片方が弱ってくると、もう片方も同じ時期に弱ってきます。
だからこそ、いま薄毛を気にしていない方ほど注意が要ります。分け目に白髪を見つけて、気軽に抜く。けれどもそこは、何年か先にいちばん地肌が気になってくる場所です。将来いちばん髪に残っていてほしい場所から、先に減らしていることになります。
なぜ、分け目や頭頂部から先に変わっていくのですか?
女性ホルモンの影響の受けやすさが、場所によって違うからです。女性ホルモンは、ダムの水位が下がっていくように、年々ゆるやかに下がっていきます。
頭をダムに見立てると、いちばん高いところ、つまり分け目・つむじ・頭頂部が、水位の低下をまっ先に受けます。逆に、襟足や耳の後ろのような低い位置は、最後まで影響を受けにくい場所です。ご年配の男性で、頭頂部は薄くなっていても襟足や側頭部にはしっかり髪が残っている、という見え方になるのは、この順番があるからです。
女性の場合も、順番としては同じです。白髪が分け目から目立ちはじめるのも、ボリュームが分け目から気になりはじめるのも、根っこは同じ話です。
もちろん、こうした変化の出方や速さには個人差があります。1本2本抜いた程度で、すぐにそうなると考える必要はありません。問題になるのは「同じ場所を、何年もくり返す」ほうです。分け目の決まった一角だけを毎週抜いている、という方は、そこをやめるだけで数年後の見え方が変わってきます。
抜く代わりに、どうすればいいですか?
手は3つあります。白髪の本数と、どのくらい気になっているかで使い分けます。3つを一度に決める必要はありません。いまの本数に合うものから始めて、増えてきたら次に移れば十分です。
- 根元の近くで、短く切る……数えられる程度の本数のとき。いちばん手軽で、髪にも負担がありません
- その日だけ、隠す……明日人に会う、写真を撮る、といった日。ヘアマスカラやスプレーで、気になる場所だけ色をのせます
- 染める……切るのが追いつかなくなってきたとき。ここからは、染め方そのものを選ぶ話になります
隠す手については「白髪隠しヘアマスカラ・カラースプレーの選び方と落とし方を美容師が解説」に、選び方と、その日のうちにきれいに落とす手順をまとめています。染める手については「白髪の染め方は5種類|違いと選び方を施術3万人以上の美容師が解説」をご覧ください。
白髪を切るときの手順
- 明るい場所で、鏡を2枚使います。手鏡を合わせると、分け目の奥や後ろ側まで見えます
- ハサミは、眉用の小さいもので構いません。先が丸いものだと地肌に当たっても安心です
- 引っ張らずに切ります。指で持ち上げると、切ったあとに根元まで戻ってしまい、思ったより短くなります
- 地肌から2〜3mmは残します。ぎりぎりで切ると切り口が立ち上がり、チクチクして余計に触りたくなります
- 1回に切るのは、数本までにします。探しはじめるときりがなく、結局いつもの場所を抜いてしまいます
何本くらいから、染めるほうが楽になりますか?
はっきりした本数の線引きはありませんが、目安は「切る作業が、週に何度もになったとき」です。そこを超えると、切るほうが手間も時間もかかるようになります。
| いまの状態の目安 | 見え方 | 向いている手 |
|---|---|---|
| 探さないと見つからない(〜10本程度) | 自分でも、言われないと気づかない | 切る |
| 分け目や顔まわりに、かたまって見える | 鏡を見るたびに同じ場所が気になる | その日だけ隠す + 部分的に染める |
| 全体に散っている/毎日新しく見つかる | 切っても追いつかない | 染める(5種類から選ぶ) |
白髪が増えてくる時期は、髪が細くなったり、うねりやパサつきが出てきたりする時期と重なります。同時に気になりはじめて、どこから手をつけるか迷っている方は「40代・50代で髪が変わるのはなぜ? 4つの変化と、手をつける順番|施術3万人以上の美容師が解説」に順番を書いています。
表だけでは決まらない、3つのこと
ここまでで、やることは2つか3つに絞れます。ただ、最後のひとつを決めるには、見ないと分からない条件がいくつかあります。
① 白髪が、どこに生えているか
同じ10本でも、後頭部に散っているのと、分け目や顔まわりに集まっているのとでは、見え方も対処もまったく違います。顔まわりは地肌が透けて見えやすく、染めるにしても塗り方が変わります。ここは鏡で自分を見ているだけでは、正直つかみにくい部分です。
② いまの髪が、薬剤の負担に耐えられる状態か
白髪を染める方法のうち、しっかり色を入れるものほど髪への負担は大きくなります。毛先がすでに硬くパサついている状態で始めると、白髪は隠れたのに手ざわりが悪くなった、ということが起こります。負担を抑えた選び方もありますが、それはいまの髪の状態次第です。
③ カラー剤でかぶれた経験がないか
以前にカラーで地肌がしみた、かゆくなった、赤くなったという経験がある方は、染め方の選択肢そのものが変わります。この点については、ご自身で判断せず、必ず医師にご相談のうえで検討してください。
この3つは、ご自身で判断しないほうが早いです。ご相談のときは「染めたい」ではなく、「抜くのをやめたい。切るか染めるかで迷っている」と言っていただけると、こちらも髪を見ながらその場でお答えできます。
よくある質問
白髪を抜くと、次は黒い髪が生えてきますか?
生えてきません。抜いたことで、その場所の髪の色が決まり直すわけではないからです。同じ場所から、また白い髪が伸びてきます。ただし、色をつくる働きそのものが失われていない場合には、時間がたってまた色のついた髪が生えてくることもあります。これは抜いたかどうかとは関係がなく、狙って起こせるものでもありません。
抜いたところから、もう生えてこなくなりますか?
1本2本抜いた程度で、生えてこなくなると考える必要はありません。心配なのは、同じ場所を何年もくり返し抜いている場合です。引っ張る刺激が続くと毛穴が少しずつ小さくなり、生えてくる毛が細くなっていきます。しかも、その場所は年齢とともに薄くなりやすい場所と重なります。気になっている一角があるなら、そこだけでもやめておくほうが、数年先のために確実です。
ピンセットで抜くのと、指で抜くのはどちらがましですか?
どちらもおすすめしません。指でつまむと、狙った1本だけでなく、まわりの毛も一緒に引っ張ってしまいます。ピンセットは1本だけをつかめますが、そのぶん一点に力が集中します。「ましなほう」を探すより、ハサミに持ち替えていただくほうが確実です。
白髪を根元で切ると、チクチクしませんか?
地肌ぎりぎりで切ると、短い切り口が立ち上がってチクチクすることがあります。2〜3mm残して切れば、残った毛がまわりの髪に沿うので、ほとんど気になりません。立ち上がりが気になる場合は、少し長めに残して様子を見てください。
抜いた白髪が、くせ毛のように縮れていました。白髪は必ずくせが出るのですか?
必ずではありませんが、出やすくはなります。色がなくなるときに、髪の太さやかたちが少しずつ変わっていくことがあるためです。同じ頭でも、まっすぐな白髪とうねる白髪が混ざるのはこのためで、うねる1本だけが目立って見えることがあります。感じ方には個人差があります。
最後に
白髪を抜くのをやめるのは、我慢するという話ではありません。抜く以外の手が3つあると分かっていれば、見つけたときに手が止まります。まずは、眉用のハサミを洗面所に置いておくところからで十分です。
いま抜くのをやめることが効いてくるのは、5年先・10年先です。そのころにいちばん気になってくる場所を、いま自分で減らさない。それだけでも、やめる価値は十分にあります。
切るか、隠すか、染めるか。ご自身で決めきれないときは、髪を見せていただくのがいちばん早いです。ご相談はLINEからどうぞ。メニューと料金は料金メニュー、場所とご予約はアクセス・ご予約にまとめています。
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